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2007年 03月 08日

5番

 ヴィスコンティの「ヴェニスに死す」という映画でこの5番の第四楽章が使われているのは有名だね。
もともとオペラ畑の人だから、こういう音楽を使えるのは当然として、原作者トーマス・マンとマーラーの、少しではあるのだけれどその交流を知った上で、数あるマーラーの曲の中からこの曲を選んだところにヴィスコンティの意図を汲み取るべきだよね。

5番_e0080678_23181019.jpg


こういった曲は、もちろんその曲だけで成り立っているもので、であるからそういう曲は映画のBGMとしては成り立たず、無理やり使ってみたところでうっとうしいだけ。

そういうことは私などがごたごた言わなくても、ちゃんとしてる映画はちゃんとしているわけで、そういう意味で印象的だったのは、これも古い映画だけど「ジャッカルの日」。
この映画ではいっさいBGMが使われていない。

映画「ヴェニスに死す」でも、当然のごとく曲は単なるBGMではなく、曲が始まれば、物語はその曲にゆだねられる。
物語の中でもマーラーの曲は使われているのだが、それはもはや主人公が弾くピアノのひとつのフレーズであったりする。
で、これが魅力的なんだな~。

ヴィスコンティの映画と言えば、どうしても映画「ルードヴィヒ」を思い出す。

一時期ワーグナーのパトロンとしてバイロイト建設にかかわったりした例の狂王のお話。
ノイシュバンシュタイン城でも有名なのかな。

5番_e0080678_23182732.jpg


ここに出てくるワーグナーが、俳優のせいか、どうも安っぽくていけないが、ま、ここでワーグナーが重さを持ってしまったら、主人公が目立たなくなるから仕方がないんだろうね。

この映画の中で使われているのは、もちろんワーグナーの音楽が多い。
実は私は、この映画の中でワーグナーの絶筆となったスコアの音楽が聞けると聞いて、見に行ったんだ。

絶筆となったスコアは断片的なピアノ譜らしいが、そのピアノ演奏はもちろん、誰の手によるものかは知らないが、オーケストラレーションされた演奏も聞ける。


この曲を映画の中ではじめて聞いた時、マーラーの10番を思い出した。
共に絶筆だから思い出したのではなく、その曲のありかたのようなものを感じて。

いままでの自分の作ってきた音楽から、半歩踏み出して行こうとするような・・・

振り返れば自分が築きあげてきた音楽の森。
踏み出そうとする自分がいるのだが、振り返りたい衝動にかられる。
振り返れば暖かい安住の地がある。
それはわかっているのだが、自分は踏み出そうとしている・・・。

先に何があるのかもわからない。
わかるのは、後ろに残してきたもの。
何があるのか、どこへ行くのかわからない不安と焦りと、
残してきたものを振り切って、切り捨てて歩みだす肩の軽さと、
全てを捨ててしまった、自分の身ひとつのすがすがしさ、
そして、やはりどうしようもない寂しさと、



この映画の中ではシューマンの「子供の情景」も使われている。
狂王の物語になんとふさわしいことか。



映画のエンディングでも、この曲が流れる。
二度と聴けないと思ったから、一生懸命聴いた。
全部、全部、聴きたかった。聴き逃してはならない。

おかげで、何年も経った今でも覚えていられた。

でも、最近、この映画のサウンドトラックが発売されていることを知った。

買った。

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でもほとんど聴かない。




う~ん、
話がずれてる・・・・



5番は人気があるだけあって、レコードもやたらと発売されてた。

ちょうど「ブルックナー・マーラーブーム」なんて言われる時期と、指揮者の世代交代(?)の時期が重なってたようで、当時の若手(?)指揮者はこぞってマーラーに取り組んでたね。

アバド、メータ、を始め、レバインも懐かしい。
そうそう、カラヤンもこの時期5番を出したっけ。

ショルティ、バーンスタイン、クーベリックは置いておいて、

ウィーンフィルとの復活がよかったメータは、今度は手兵のロス・フィルとだが、こいつはがっかり。フィラデルフィアとのレバインは、これはかなりいい。

が、


お気に入りは、なんと言ってもバルビローリ。


バルビローリは正規版(?)としては、EMIから
 5番  ニューフィルハーモニア 
 6番  ハレ
 9番  ベルリン
の3種出ていた。

別格の9番を除いても、5番、6番、共にいい。

当時私は外盤に目覚めたころで、英国プレスのこのレコードを見つけた時は嬉しかったな~
こんな英国プレスを聞くと、国内版なんかカスカスで聞いていられない。
ま、贅沢な話だけど・・・。

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このバルビローリのゆっくりした濃厚な表現は、すばらしいよ。
たっぷりしたテンポに身を任せてその一音一音に聴き入る。
一音一音の表情に、その表現に聴き入ってると、このテンポが当然あるべきテンポに感じられる。

by johannes30w | 2007-03-08 16:57 | オーディオと音楽


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