2009年 12月 23日
友人と言ってしまうのは申し訳ない気もするのだが。 一度行っただけなのだが、教えられたとおりに電車を乗り継いでいくと、 何故だか妙に知った道に思えてきた。 電車を降りて駅前のロータリーに出ると、bjさんが迎えに来てくれていた。 メルセデスは未だピンシャンしており、ぼつぼつサスやブッシュをなんとかしなければと仰るbjさんの言葉はさておき、私などは、この「当たり」の優しさがあるのなら今のままでも十分いいんだけどなと助手席でぼんやり考えていた。 冬の日はさすがに暗くなるのが早く、bjさん宅に到着した頃にはすっかり夜になっていた。 階段を踏み外さないように降りると、そこはオーディオルーム。 ドアを開けると、不思議な空気があった。 なんだか瑞々しい空気で、森林浴に来たわけじゃないのに清清しい。 何故だろう。 レイ・オーディオの巨大なモニタースピーカーは、 もはやその巨体をこれ見よがしに誇示することなく部屋に溶け込んでいっているように思えた。 どこをどうしたということは全くないんだろう。 bjさんに確めても、スピーカーの位置など全く動かしていないと答えられた。 でも何故だか確かにそれは溶け込んでいっているように思われた。 私が勝手にそう感じただけなのだろうが。 実は部屋に入った時から静かに音楽は流れていた。 ブラームスの一番。 最高のおもてなし! 嬉しい よく思うんだ。 それこそ心血を注ぎ込んで構築し、作り上げたその装置、それはもはや単なるオーディオ機器ではなく、自分の全てを捧げたそれは身体の一部であり、恋人であり、怪物なんだ。 そんな機器に電気を通し、血を通わせ歌わせる。 その歌がどれほどの意味を持つものか、真剣に取り組んでいる人ほど判るはずだ。 うーん、 やっぱり話がそれる。。 だからいつまで経ってもアップできないんだ。。。 聞かせてもらった。 BGMじゃなく、いよいよ本気で聞かせてもらった。 厳しい! 厳しい音だ 躊躇無く、容赦も無い。 一瞬たじろいだが、これは戦わねばならない音。 いや、戦わねばなんて思っているのは私だけで、スピーカーは私のことなど何のお構いも無い。 当然のことといえばそのとおりなんだが、 しかし普通のスピーカーなら、暫く聞いていればこちらのことに気が付いて、手加減してくれるようになるもんだ。 しかししかしこのスピーカーときたら、こちらに見向きもしない。 なんて奴だと思いながら、それでも聞き続けた。 これこそプロ機なんだ。 なにものにも侵されない。 厳然と動作し、ゆるぎない。 JBLが軟弱にさえ思えてくる。 bjさんは、今、この音を選んでいる。 耳当たりのいい八方美人な音など簡単に得られるはずなのに、 しかし今、この音を鳴らしている。 その意図は何なのか。 この恐ろしいプロ機たちに命令を下し、確実にその意図を実行させているのははっきり判る。 その意図は何か。 こんなふうに書いてくると、 さぞかし煮詰まったピリピリした雰囲気の中で聞いているように思われるかもしれないが、 確かに聞くという行為に対しては真剣ではあるけれど、 実際の雰囲気は和やかなもの。 同じ趣味を持つなどと言ってはbjさんに失礼だが、 私などが見ても、その部屋は宝物に溢れてる。 ただしその宝物は、趣味を同じくするものにしか宝物には見えないしろもので、 言ってみれば、それは子供が公園で拾ってきた「きれいな石」や「ピカピカ光る釘」に近い。 「お! これ、なんですか?」 「それは、ノイマンの・・・です」 「おおー! ノイマン! (かっちょいいな~) 」 「ノイマンです」 「ん~、何に使うんですか?」 「わかりません」 「・・・・・・・・・ (でもかっちょいい・・)」 「いい塗装してるでしょ?」 「うん、いい塗装だ。色もいい!」 「ここに銘板がついてます」 「うんうん、この銘板がかっこいい」 「ここにもついてます」 「おー」 「ここにもついてます」 「おおー!」 「いっぱいついてます」 「ぬおー!!、、、かっちょいい、、、、。。。」 こういうものを欲しいと思ってしまうのは、 公園でトモダチが捕まえたでかいバッタを羨ましく思うよりも下等だとは自覚するのだが、 それでも欲しい気持ちには変わりは無い。 我々が子供だった頃の大人というのは、もっと大人だったと思うのだが。 その後もどんどん聞かせてもらったのだが、、、、 bjさんが、もういいかななんて雰囲気で、スピーカーに近づき、ごそごそと・・・・・。 巨大なモニタースピーカーは、スパッと向きをを変えた。 おお! レイオーディオがこちらを見てくれるようになった。 少し冷たいその表情はそのままに、しかしたしかにこちらを向いている。 その変化の後の音の見事さもさることながら、 私が驚いたのは、実はその変化のしようだった。 あまりに見事な変化。 その変容ぶりにも躊躇が無い。 私の装置でこれをやったとしても、スピーカーはなかなか付いてこない。 「え? そんなに変えるんですか?」 とか、 「何で変わらなきゃならないんだ?」 とか、 散々ブツブツ言った挙句にやっとこさ付いて来る。 いやいや付いてきてたりするもんだから、表情も冴えないことが多く、 こちらが業を煮やして元に戻すと 「ほら~、コッチがいいに決まってるじゃない」 なんて言ったりする。 bjさんのレイオーディオは、一糸乱れぬ動きをする。 指揮者の命令には躊躇なく一気に動く。 実に見事でその行動に美しささえ覚える。 プロ機の在るべくして在る姿だと思う。 しかし、実際はそういう装置はなかなかに存在しない。 凄いなと、心底感心した。 凄いと言えば、 今回の訪問で一番驚いたのは、レイオーディオスピーカーのシビアなこと。 うちのあんなバラバラなシステムでも、一つ一つ追い込んでいけばシビアになってきて、 それこそ追い込みすぎるとピンポイントの焦点となってしまって、聞いてる私が身動き取れないような状態になってしまう。 レイオーディオのこのスピーカーは、その焦点の合い方が尋常ではない。 あんなに巨大なスピーカーなのに、まさにピンポイントで焦点を結んでいる。 bjさんも、使いこなしを楽しまれてるのがよくわかる。 スピーカーはあまりに重くて、全く動かしていないと仰っていた。 じゃあ何をやっていらしたかと言えば、 スピーカーが動かないなら自分が動こうということだね。 以前にお邪魔した時に比べ、聞く位置が若干下がっているように思った。 それで何をしていらっしゃるか。 これは部屋の定在波を利用して遊んでいらっしゃる。 バスレフのポートチューニング周波数と、定在波の周波数を上手く利用して、最低域のコントロールを楽しんでいらっしゃるように聞こえた。 おもしろいなぁ~ ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 今私はアナログに力を入れている。 当然、bjさんのアナログが気になる。 レコードを聞かせてくれませんかとお願いした。 bjさんは中島みゆきはあまり持っていないんですよと言いながら、 ユーミンを聴かせてくれた。 凄い bjさんのユーミンは凄い! ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 瑞々しい空気は忘れがたい。 冬なのに、寒くなく、そして清清しい。 あれは何故なんだろうと考え続けている。 火鉢か。 私も手元の火鉢を探してみようかな。 そうすれば、あの空気が得られるかな。
by johannes30w
| 2009-12-23 02:07
| オーディオと音楽
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