2010年 09月 21日
SPUは、オルトフォンなのだから、当然オルトフォンのアームを使うことが当たり前で、 そのことでオルトフォンは完結するのだが、 私自身もそう信じて疑わないし、 今でもその考えは変わりはしないのだが、 それはオルトフォン社が想定したSPUの音であって、 SPUの能力を最大に発揮したものではないのかもしれない。 こんな考え方は、非常に危険であることは判っている。 しかし、ある作品が、その作者の手から離れたとたん、 作者の意図とは別のところでその作品自体が生きていくように、 製品にだってそんなことが当てはまるかもしれない。 メーカーが最善を尽くして組み上げたシステムを、我々シロートがろくな知識も無く勝手に弄ってしまって、 自分が弄った満足感も手伝って、良くなったように勘違いすることはいつもよくあること。 大概の場合はシロートはミクロの部分ばかり見てしまって、総合的な全体が見えない。 よく雑誌やネットなどで取りざたされる「解像度」「空間表現」などを聞き取ろう、比較しようなどと考えると、 大失敗すること間違いない。 あくまで、音楽がどう聴こえるかということを聞いていかねばならない。 久しぶりにRF297で聞いてみる。 はっきり言えば、ほとんど期待していなかった。 ずーっとこのRF297を使って、聞いてきて、 グレイの208アームに換えた瞬間、その音のよさにビックリした経験があるから。 でも、297はやはり使いたいんだ。 憧れてきたアームだしね。 期待してはいなかったけど、 なかなかいけるじゃん! と思った。 爆発力は無いが、 角の取れたエレガントな音がする。 実に納得できる音だ。 これなら使って文句は無い。 トレースにも不満は無い。 いつも嫌だった最内周の不安定さは、今や過去のものだ。 あの頃は、何が良くなかったんだろうか。 思い出せないくらい、ある時からアナログの不安定さから開放されている。 レコードをトレースする姿も魅力的で申し分ない。 これなら、 これで終わっても良いんじゃないかと思える。 無理にグレイを試さなくても良いんじゃないかと。 私の中途半端で終わっている「アナログプレーヤー考」でも少し言及したが、 この気の利かないSPUのシェルの指掛けは実に使いやすい。 私は針圧は3.8~4.2gくらいで使うことが多いのだが、その針圧で扱うのに実に使いやすい形状なんだ。 ここらはコンプリートなシェルの強みなんだろうね。 想定する針圧がある程度決まっているから、そこにぴったり合わせたシェル指掛けの形状が作れる。 コンプリートではない汎用なシェルの場合、 針圧の想定が出来ないから、シェルの指掛けにしても、どうしてもそれこそ汎用な設計になってしまうんだろうな。 ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ アームをグレイ108Bにしてみる。 カートリッジは同じくSPU。 SPUは個体差が非常に大きく、単純比較はできないことは解っているが、 同じ個体を付け替えるのはあまりに大変なので、 そこは省略。 グレイの108Bは、もともとモノラルの時代のアームで、 そのカートリッジコネクターも、もちろんアームケーブルもモノラル用。 カートリッジコネクターを切り落とし、アームの配線を作り直した。 もともと重針圧の時代に作られたアームを何故今使おうとしているのか。 その基本構造ゆえに在る。 このアームはワンポイントサポートのオイルダンプという構造を持つ。 よく知られた最近の例で言えば、オーディオクラフトのアームと全く同じ。 ただしこちらは無骨で原始的。 細かい調整機構などいっさい持っていない。 アームの性能を測る尺度として、初動感度を挙げることが多い。 初動感度を良くすることを目的の一つとして、ナイフエッジが使われ、 ダブルナイフエッジなどというものさえある。 初動感度がアームの音のよさとどの程度関係するのかはいろいろ意見があるだろうが、 このことに注目した国産メーカーは、こぞってその感度向上に全精力を上げたように思える時代があった。 精度を上げ、初動感度を上げ、その精密機器としての魅力は私のような者にも計り知れないものがあった。 単純に、初動感度を考えた場合であっても、ワンポイントサポートというのは理想に限りなく近いと考えられる。 ワンポイントサポートのアームが何故多くないのか。 それは、その調整機構を構築するのが非常に困難であるために違いない。 360°やじろべえ状態で、さらに、ある一方向に針圧を懸け、場合によってはさらにインサイドフォースを打ち消さなければいけないのだから。 では、オーディオクラフトとグレイの違いは何か。 グレイのアームが調整機構を持っていないことは、この際問題にはならない。 すでにそのカートリッジコネクターを切り落とした段階で、このアーム自体に手を入れることははっきりしているわけだから、 各所にウエイトを追加したりして、SPU専用の完全な調整を行うことは可能。 では、クラフトとの最も大きな違いは、結局はそのアーム自体のマスにある。 と言っても、クラフトのアームも出来る限り真鋳を使ったりして、 ある程度のマスを確保しようとしているようにさえ見えるのだが。 マスがあればどうなるのか。 アームにおいてマスを考えるのは、慣性質量のこと。 アームにはいろんな形式がある。 一番多いのは、ナイフエッジサポートのスタティックバランスだろうね。 明らかにSMEの影響だ。 ナイフエッジのダイナミックバランスもある。 質量分離型なんていうのもある。 良く知られているのはダイナベクターのアームだね。 あれは質量分離型のスタティックかな。 今やとんでもない値段がついている。 しかしよく考えれば、たとえばM会長が使っているグレイの106アームも質量分離型のスタティック。 グレイの206は、質量分離型のダイナミックバランス。 トランスクリプター社のヴェスティガルアームだって質量分離型のスタティック。 一般に、質量分離型っていうのは、前述のマスを減らすために都合がいい。 究極が、ヴェスティガルアームだろうな。 超ハイコンプライアンスカートリッジを使うなら、もう一度こいつに挑戦してみたい気もする。 このハイコンプライアンスあるいはローコンプライアンスというのが微妙な話。 一般的に、ハイコンプライアンスカートリッジには軽量アーム、 ローコンプライアンスカートリッジには重量級アームをあてがうことが当然の方向であるとされている。 まあそのとおりなんだろうと思う。 しかし、軽量級アームはどうしても音まで軽々しくなりがちなのは、誰でも知っている。 カートリッジのコンプライアンスが高くなって、軽量アームが必要になってきて、増えたという見方もあるが、 やはりここでもSMEの影響が大きいように思えるね。 SMEは、シリーズⅡで大きく軽量化した後、とうとう究極とも言えるシリーズⅢまで進んだ。 これの影響は大きい。 SMEのアームの軽量化が進んだのは、エイクマンの常用カートリッジがSPUからシュアーに変わったせいだというのが定説。 ただ、 SMEは、 その究極とも言える軽量アームであるシリーズⅢに、なんとオイルダンプを仕組む。 これは、大きなヒントになるんだ。 質量分離型なんていうのも、結局は、軽量化への一手段。 ダイナベクターなどは、単なる軽量化ではしっかりしたサポートをすることが出来ないから、 がっちりした強度と軽量化を両方狙った形であると見ることができる。 そういう狙いは、最近は新しい素材を使うことで達成しようという機種が多いね。 軽量化というのは
by johannes30w
| 2010-09-21 16:38
| オーディオと音楽
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