2014年 12月 02日
晩年のジュリー二指揮による「英雄」 今の私にはこの演奏が良い。 聴き損じると、あの印象的な開始早々失速したかのように聞こえるが、 このゆったりした、しかし弛緩しない、この息遣いでしかなし得ないベートーベンが、 厳然とここにある。 この音の流れに自分の呼吸を重ね、そして静かに目を上げれば、 そこには細部まで彫琢され、しかし恐ろしいまでの威容を持つ巨大なベートーベンが見えてくるはずだ。 しかししかし、それでもジュリー二の音楽は美しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー ベートーベンを聴こうとCDの棚の前に立ち、 私の持っているCDにはベートーベンが少ないことに改めて気がついた。 マーラーがやたら多いのは仕方ない(?)とはいえ、 ベートーベンはあまりにも少なすぎるんじゃないか? それこそブラームスの方が、圧倒的に多い。 これがレコードとなると、当然のごとく、ベートーベンが他を圧して存在するのだが、 CDではそうはなっていない。 世の音楽ソフトがCDに代わって行った時、私は高校を卒業したころだったと思い出すが、 まあ言ってみれば、へそ曲がりに拍車がかかった頃で、 そんなこともあって、ベートーベンのCDが少ないのかもしれない。 そんな作曲家間のCD枚数の比較なんぞは大した意味を持たないと言われるだろうし、 私だって、趣味の問題なのだから、当然いろいろなパターンがあって当たり前だと考えるが、 一音楽ファンとなって改めて考えてみると、 やはりこれはおかしいんじゃないかと思えてくる。 ベートーベンよりショスタコービッチの方が多いなんて、 お前は何にもわかってないななんて言われても、言い訳のしようもないね。 そんな私でも、昔から聴き続けている演奏もある。 これはベートーベンの、ピアノとヴァイオリンとチェロのための協奏曲。 俗にいうトリプルコンチェルトという曲。 このブログでも何度も取り上げているが、やっぱりこれは好きなんだ。 中学生の頃だったと思うが、何だかめちゃめちゃ好きになって、 毎日毎日聴いていた。 当時、カラヤンはやっぱり嫌いで、 特にカラヤンのベートーベンやブラームスは、どうしようもなく嫌だった。 今となっては、C.クライバーのベートーベンを褒める人間がカラヤンを嫌うなんておかしいと言い放ってやりたいくらいだが、 この演奏はとにかく好きだった。 聴いて聴いて、聴きつくしたレコードであり、そのあと改めて買い足したCDだが、 今でも聴きたいと思うのは、 これこそ名盤と言えるものなんだろうね。 今回も、システムが復活して、英雄で満足したら、これに手が伸びた。 聴きなれた静かな序奏で始まる。 少しづつ弦の響きが積み重なり、音に厚みが与えられてくると、いつもワクワクする。 私にとって真空管アンプの最大の魅力は、音の立体感。 演奏者の実在感といってもいい。 決してやさしさや肌合いの良さではない。 よって、こういうコンチェルトなどの独奏者の息遣いがなんとも生々しい。 デジタル化によって得られる最大の利点はコントロールの正確性だとは思うが、 意図しなかった大きな素晴らしさは、完全なセパレーションが得られたこと。 これはオールアナログ時代には想像もできなかったことで、 音像定位の凄さは、これはもうデジタルの独壇場。 私のシステムも、バランスが落ち着いたらスピーカーのセッティングを、 手直しなんてレベルじゃなく、根本的に見直さなければいけないと考えている。 独奏者の立ち位置は面白いように安定している。 それを作り出しているエンジニアの苦労がはっきり見えてしまうのはご愛嬌だが、 それにしても、この三人の独奏者の表情を見ていると面白くて仕方がない。 若いロストロポーヴィッチは、どんどんのめり込んでいく。 オイストラフは泰然自若として音楽を完全に歌い上げる。 リヒテルは、少し不満に思っているのか、口がへの字に曲がっているね。 それにしてもカラヤンなんだ。 当時の演奏評などでいつも書かれていたのは、「完全なバックアップ」なんていう意のことだったが、 いや、 それが全くとんちんかんであることが、何十年もこの演奏を聴いてきて、今はっきり解った。 カラヤンは、猛烈に音楽を突き進めている。凄いエネルギーだ。 伴奏なんていうものじゃなく、3人の名演奏家をはっきり上回って熱く音楽を追及している。 凄い! 何十年も飽きずに聴き続け、そのたびにいいなあ~と思うのは誰でも出来るだろうが、 何十年越しにどんどん新しい発見をし、全く新しい感激を味わえるなんて、 これは、我々オーディオに真剣に取り組んでいる者だけが味わうことが出来ることなんだろうね。 オーディオファンを小ばかにした自称音楽ファンにはとてもじゃないが感じることができない、 聴くこともできない音楽の素晴らしさなんだろうね。 まだまだ調整途中ではあるんだけど、 このベートーベンを聴いて、私が今回進めつつある大改革は間違っていなかったと確信できた! うれしい! デジタル系の機器は、軽薄だというのが一般的な理解だろう。 しかし、本気で作られたものは、今や同列に置いても見劣りはしない。 良い時代になってきたのかもしれない。
by johannes30w
| 2014-12-02 01:32
| オーディオと音楽
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